

FM Seeds・・・三菱自動車の社内の有志の女性で結成されたチーム。「女性視点でアイデアの種(Seeds)を蒔き、お客様に満足いただけるクルマやサービスの花を咲かせよう」というテーマのもと、販売・促進のプロモーションなどで活動中。
大貫さん・・・多摩美術大学卒業後インテリアコーディネータを経て、カーインテリアのトータルコーディネートを手がける「アンセル」の立ち上げに参加。
>> アンセルHP
>> クルマを自分スタイルにデザインしよう
そのピンクのクルマはショールームの中で、一際目立っていました。
思わず目を奪われたのは、i(アイ)というクルマの斬新なデザイン性や、ピンクという華やかな色だけが理由ではありませんでした。それは、まるでセレクトショップの中で独特のオーラを放つ逸品を見つけたときのような心境に近いものでした。作り手の思い入れの深さが一目でわかり、そのコンセプトや心意気が感覚で伝わってくる感じ。それがピンクiの印象でした。
近寄ってよく見たときに、それはさらに、よくわかりました。ソファのようなシートカバーや、フカフカの絨毯のようなフロアシート、ベージュとアンティークピンクで上品にまとめられた内装、花の形をしたシャンデリア、スワロフスキーなど・・・。細部にまで施されたこだわりの数々が、“只者ではない”オーラを放っていたのでした。 このコンセプトカー、通称“ピンクi”をプロデュースしたのは、三菱自動車工業株式会社の女性チーム「FM Seeds」の皆さん。そして、女性の心を捉えたカーインテリアグッズの開発で高い評判を得ている株式会社ダムドアンセルの代表 大貫雅子さんでした。女性による女性のためのクルマ
「FM Seeds」が結成されたのは丁度、事業再生計画中で正念場を迎えていた時期。社員である女性たちも不安やジレンマを抱えていた時期。そんな時期に、ひたすらお客様とクルマのことを考えて行動し、自分たちの意見が反映されていくことが、彼女たちにとって「クルマ作りとは何か」ということを改めて考えるきっかけとなったそうです。FM Seedsは彼女たちにとって、表現の場であり、成長の場でもありました。 ピンクiのプロジェクトがスタートしたのは、東京オートサロン2006出展の話が持ち上がったことがきっかけ。時はちょうど、iの発売が間近と迫った2005年秋。「女性の声を反映させたiのカスタマイズカーをつくろう」という話がまとまり、FM Seedsにとって、次のステップへ大きく踏み出す転機が訪れたのでした。 FM Seedsメンバーからアンケートを取った結果、今回のiの改造計画(?)のテーマとして選んだのは“宝箱のような「私のお部屋」”。女性の求める装備に加えて空間演出に力が注がれました。そこで強力な助っ人として声が掛かったのが、日本を代表する女性向けカーインテリアブランド「アンセル」の代表兼チーフデザイナーの大貫さん。FM Seedsのリーダーが以前から注目していたことをきっかけに今回のコラボに繋がりました。男性には理解が難しい感覚や女性の気持ちを、大貫さんが一女性ユーザーとして代弁し、開発者の視点から提案してくれたことで、急速に道は開けました。「女性の気持ちを吸い上げたクルマを作りたい」
これまで、「女性向けと謳ってはいるけど何か違う」という商品をたくさん見てきた彼女たちが決めたルールは、「自分たち(女性)がイイと思うことしかやらない。欲しいと思うものしか作らない」ということ。
大貫さんとFM Seedsの思いは一つでした。オートサロンまでわずか2ヶ月余りという時期にピンクiのプロジェクトはスタートしました。
ピンクという、いかにも女性らしいカラーを選んだことには迷いがありました。安易なイメージを抱かれてしまうのではないか。そうは言ってもピンクは根本的に、女性を惹きつけ、女性の心を優しくする色であることは事実。イメージはブリブリなピンクではなく、柔らかさのある、上品で温かみのあるピンク。
大貫さんは彼女たちの希望を初めて聞いたとき、「iはスポーティなイメージのあるクルマだから、全く異なるイメージをくっつけるのは大変かもしれない・・・」というプレッシャーを感じたそうです。しかしボディカラーやシートの生地に至るまで、FM Seedsの皆さんの「こうしたい!」という思いを受け止め、技術担当者との折衝をはかりつつ反映させ、見事彼女たちのイメージ通りのピンクiを完成。大貫さんにとっても「全く異なるものを組み合わせると面白くなる」という気づきを得た経験となったのでした。
ピンクiは機能面においても、女性のニーズを反映させています。事前に実施した女性ユーザーのアンケートでは、「収納の充実」というニーズが最も多かったそう。それも、「小分けに目的別に入れられる場所がほしい」ということで、助手席のドレッサーボックスが誕生しました。閉まった状態で見ると普通の収納に見えますが、開けたときに丁度顔が映る位置に来る鏡など、細かいところにスゴ技が効いた夢のドレッサーなのです。移動手段としてだけではなく、もっとクルマを楽しんでほしい
喜びの裏には数々の苦労もありました。メンバーそれぞれの描いているイメージは、根底は同じでも具体化するとそれぞれのこだわりがあったり、社内の男性に伝えるためのイメージの言語化に苦労したり。マストだった化粧トレーがどうしても上手く収まらなかったり。中には、塗装の色が予想以上に明るくてびっくりしたけどショーで人目を引くことができて結果オーライなハプニングも。 カスタマイズカーのプロである上司からは、「イメージ通りに出来上がることはほとんどないから、覚悟しておけよ」と言われていたそうですが、イメージ通りどころか「良すぎてびっくりした!」というほどの出来に仕上がったのは、女性の柔軟な感性のなせる技なのでしょうか。オートサロンや丸の内で開催された展示会では、女性ユーザーからの反響が大きく、「あのピンクのクルマがほしい!」という声が殺到したそうです。実際のユーザーの反応が成功の何よりの証。 「ピンクiはアンセルさんが一緒だったから出来たクルマ」とFM Seedsの皆さんが言うと、「普通は2ヶ月じゃ、ここまで作り上げることは出来ない。技術者の理解もあったからこそ」とアンセルの大貫さんは言います。ぜひこの息の合ったコンビネーションで次のコンセプトカーも手がけてほしいところ。 FM Seedsは今後、ピンクiに反映したアイデアの中から、いくつかの装備・装飾の市販化を提案中だそうです。「今後も女性が楽しめるようなクルマを提案し、女性のクルマに対する興味関心を高めていきたい。クルマをただの移動手段として乗るだけでは勿体ない。もっと楽しく乗ってほしい!」。※ピンクiはコンセプトカーのため販売はされていません。
今回のピンクiはショーカーなので実際に販売はされませんが、こんな素敵な心意気を持つ女性たちが、もっとクルマづくりの現場で活躍するようになれば、本当に女性が共感できるクルマが生み出されるはず。CarTimeでも、彼女たちを応援すべく、そんな“クルマをつくる女性たち”の姿を今後もご紹介していきたいと思います。








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